「スラムドッグ$ミリオネア」の世界 〜ムンバイ最大のスラム街を見学して考えたこと〜

あまり観光地がない経済都市・ムンバイで何をしようかと考えてLonely Planetのページをめくっていて、目に留まったのは、”Dharavi Slum”というコラムでした。

都会ですから裕福な人も多い中で、光があれば影もある。

ムンバイのスラムに対してはそんなイメージを漠然と持っていました。実際はどうなのかー。

夜行列車でゴアからムンバイに到着したその日の午後、このツアーに参加してみることにしました。

スラムドッグ$ミリオネアとは?

2008年に公開された、ムンバイが舞台の映画です。

映画の原作は「ぼくと1ルピーの神様」という小説で、こちらは不覚にもまだ読んだことがないですが、映画より奥が深く詳細な記述もあり、とても評判が良いようです。だいたい小説が原作で映画化されたものって、元々の小説の方が良いとされますよね。

テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく。

(出典:シネマトゥデイ

このブログは映画の批評サイトではないので、映画に関する詳細なレビューはここでは避けますが、なかなかスラムと聞いてもイメージが湧きにくい日本人にとっては、こういう世界が存在するという事実を知ること自体に少なからず意味があると思います。

ただし、実際のスラムが映画で描かれているような場所なのかというのは別の問題で、それはこの記事の後半で触れます。

2018年12月現在、AmazonのPrimeVideoでダウンロードできます。僕は事前にiPadのアプリにダウンロードしておき、ゴアからムンバイへ向かう夜行列車の中で、2時間ぶっ続けで見ました(内容的に、食事中に見るのは勧めませんが)。

REALITY TOURS & TRAVELが催行するDharavi Tour

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映画上の設定で、ジャマールの出身はムンバイ最大のダラヴィ地区にあるスラムということになっています。

このダラヴィのスラムを見学できるツアーが、毎日午前・午後の2回催行されています

REALITY TOURS & TRAVELという地元のインドの旅行会社催行で、直接ウェブサイトに行って申し込みます。

900ルピーで、事前にクレジット決済可能です。

僕は12/28の午後、ハンピのルーフトップレストランでミールスを食べながら予約しました。3日後でしたが特に問題はなく、すぐに返事を貰えました。

参加者は15人ぐらいいたと思いますが、3名ずつグループを振り分けられ、各グループにガイドが付きます。一方で、ツアー概要にMaxは6名と書いてあるので、年末年始の特別対応で滑り込ませてもらったかもしれず、できれば早めに申し込んだ方が良さそうです。

Churchgate駅とダラヴィ地区の位置関係

このツアーの集合場所は選択肢がいくつかありますが、市内中心部に泊まっているならChurchGate駅を選ぶのが良いと思います。

ダラヴィ地区は市内中心部から15kmほど北上したところにあり、ムンバイの国際空港から近いです。ツアー参加者全員で電車に乗って向かいますが、距離の割に意外と時間が掛かりました。

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Churchgate駅です。文字通り、目の前に教会があります。

ここが経済都市ムンバイのゲートウェイという感じで、少し南西に行った場所が金融街になっています。

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ツアー参加だったので、乗車券は事前に購入されたものを渡されるだけでした。

この次の日は自分で窓口で買いましたが、5Rsでした。英語も通じますし、特に不自由はありません。

ツアーの感想:ここはスラムではなく、一種のコミュニティ

前置きが長くなりましたが、ようやくツアーに参加しての感想です。

といっても写真撮影禁止だったので、あまり掲載できる写真は多くありません。

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ガイドはダラヴィのスラム出身で、今もそこで生活している17歳の女の子でした。

この写真の左の子です。

スラム出身というと教養が不足しているイメージを直感的に持つかもしれませんが、英語ペラペラでした(そうでないと世界中の観光客を相手にガイドできませんよね)。

ツアーが始まる前、このツアーを知るきっかけになったLonely Planetのコラムを、またパラパラと見ていました。

Mumbaikars were ambivalent about the stereotypes in 2008’s Slumdog Millionaire, but slums are very much a part of – some would say the foundation of – Mumbai city life.

(中略)

Up close, life in the slums is strikingly normal.

これを読んだ直後、ツアーの最初に、ムンバイのスラムと聞いて真っ先に思い浮かぶのはどんなことですか?とガイドの女の子に1人ずつ聞かれたので、

「そうね、やっぱりスラムドッグ$ミリオネアのイメージかな」

と予定調和的に答えたら、ガイドの女の子はにっこり笑って、こちらの目をはっきり見て言いました。

「ここに初めて来る皆さんが、だいたい同じことをおっしゃいます。でも、実際のダラヴィはあの映画とは違うことを、これから見て感じてもらえると思います」

スラムドッグ$ミリオネアの主人公のスラムドッグは、何の教育も受けていないスラムの野良犬と馬鹿にされる設定です。

しかし、ガーナ出身で今はシカゴに住んでいるというご夫婦とツアーが一緒の組になったので感想を聞くと、

「ブラジルなどでもスラムは見てきたけど、ここはスラムという感じじゃない」。

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実際のところ、このスラムは一種のコミュニティであり、そこに全てがあります。

家も、仕事場も、商店も、銀行も、学校も、1.75km2という広大な敷地の中に全て揃っていました。

学校の教室も見せてもらいましたが、ここが本当にスラムなの?と思うような環境に見えたし、そこで勉強する子供たちは元気いっぱいでした。

まだ学校に行って勉強するような年齢でない幼い子供たちもたくさんいて、広場でサッカーをやったり鬼ごっこをやったりしている子供たちもたくさん見ましたが、ツアー客を見つけると、一目散に駆け寄ってきて、元気な声で挨拶してくれる。

そんな子供たちの目に、絶望のような表情は全く見受けられない。

まだ物心が付く前でわかっていないだけかもしれないけれど、でも、17歳のガイドの子も、それは同じでした。

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ツアーの終わりには、住んでいる部屋を見せてくれました。

6畳ぐらいの暗い部屋の中にベッドが置かれていて、そこでお母さんと2人一緒に寝るのだとか。

お兄さんは、ロフトを登った中2階で寝る。

冷蔵庫もあり、トイレもある。

「必要なものは全部揃っていて、このスラムで暮らす他の人々に比べたら私は恵まれている。なんの問題もないし、幸せです」

と言っていました。

そんな彼女が説明をしている相手は観光客で、金はそこそこ持っていて、何日かしたらムンバイを出発してしまう。

自分たちにとっては、もしかしたら一生離れることができず住み続けるかもしれない場所でも、観光客にとっては、たくさんある観光場所の1つに過ぎず、何日かしたらムンバイを離れてしまう。

ガイドの女の子がどんなことを考えてガイドしているのか、心の中までは読めませんが、少なからずそんな気持ちもあるでしょう。

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彼女自身は、ガイドをやっている理由について

「自分が生まれ育った場所として誇りに思っているダラヴィ地区のスラムが、本当はどんな場所なのか、世界中の皆さんに知ってほしい」

と言っていました。

たくましく生きる人たちの姿を、どう解釈すれば良いのか。

すぐには答えが出ないけれど、しっかり考えてみたいと思いました。

帰りは最寄りのMatunga Road駅まで送ってもらい、解散になりました。この時点で18時前、長時間ガイドしてくれたなという印象です。

まとめ

インドのバックパック旅の中では異彩を放つスラム見学ツアーでしたが、参加してよかったと思っています。

誰もが生まれてくる人を選べない、生まれてくる場所を選べないわけで、では少なからず恵まれている自分は彼らに何ができるだろうか?を考えさせられます。

身体的にも経済的にも幸い不自由がない人間は、それを活かして行動して、世の中に何かを還元する義務を負っているのではないか。

世の中にはもっといろんなことをしたい、いろんな場所へ行ってみたいと思いながらも、それが叶わない人がたくさんいることに思いを巡らせることを、常に忘れないでいたいと思います。それが、もっと世界中を旅してみたいというモチベーションへと繋がっていきます。